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『烏合』
50人くらいの人間が、暗闇の中から明るみに駆り出された僕をジロジロと眺める。
僕は明るい方から、暗い方にいる彼らをみて、宮崎駿作品のアニメーションみたいでとても可愛いなあと思う。
あの作品はなんだったかなあと考えるが、場面が浮かぶだけで作品名が浮かんでこない。
『言いいたことはわかりますよね?』
暗い側にいる、僕の目の前に座った先生が僕に言った。
僕にだけ見える角度の先生の視線は、脅迫の念を含んでいる。
僕は、令和の時代に脅迫はいけないことではなかったかなと、ふと思った。
でもまあそれは、僕の勘違いなのだろうなとも同時に思った。この世界の仕組みはとても複雑なのだ。
『主観的にはわかっているつもりです。』
なんだか面倒なことになりそうだと思ったので、とりあえず様子を見てみる。
スライド発表のために電気を切っている教室の中には、先生の後ろに50人くらいの顔のない人たちが座っている。
部屋が暗いからだろうか?表情というものがそこには全く伺えない。でもなんだか幸せそうな顔をしているのはわかる。
そんな顔をしてくれると、僕もなんだか嬉しくなってくる。
先生は鬼の首でも取ったかのように続けた。
『こんなものでは、発表とは言いません。』
先生は、後ろに蠢いている50人くらいの人間たちを操るため定期的に、誰か一人を公式に吊るすことで、その発言力を維持するとともに、全体の士気を維持する。
とても有効な方法だなあと思う一方で、それが僕に向くのはそれと同じかそれ以上に、とても迷惑な話だなあとも思う。
『言いたいことはわかっているのですか?』
先生、2度目の質問である。
この場合、『わかっている』と言う方がいいのだろうか?
それとも『わかりません』という方がいいのだろうか?
おそらく『わかっています』といい感じに言うことが求められているのだろうなと思う。
問題としてはむしろ、いい感じに言えないことの方なのだろうなと思うが、これは後から身につけることができない類の能力らしい。
いずれにしても2択である。『わかりません』といってみた。
教室がザワザワとし始めた。
どうやら2択を間違えたようだ。
『わからないのはいけないことです。あなたはバカです。』
この教室の、この時間という限定性を担保に、この先生が言うことには絶対的な正当性が生まれている。
僕が何を言うかは関係ない。
今回のイベントの目的は、顔のない50人と先生の日頃の鬱屈としたストレスを発散するために、人間を一人吊し上げることなのだ。
この考えが正しいかどうかを確認するために、せっかくなので、答え合わせのためにもう一択の方も試してみた。
『すみません。わかっています。』
顔のない人たちが、さらに盛り上がり始めた。
先生は嬉しそうな表情を噛み殺しながら、深刻そうな真剣な表情で答える。
『あなたはなんなんですか。真面目にやってください。あなたはバカです。』
やはり、僕の考えは正しかった。
どちらを選んでもアウトだったようだ。
僕は頭がいつもよりも冴えている。
今、国語のテストがあったら90点くらいなら取れそうだ。90点も取れたらそれは、僕は頭がいい人ということになるから、先生が言うこととは矛盾してしまうことになるけれど、この世界の設定ミスなんだと思う。
でも神様も毎日働いている中で何回か間違えることもあると思う。いつもお疲れ様です。
そこからは一方的に僕が言われ続ける展開だった。
人間は昔から一方的に相手をやり込めることが好きだなあと思いながら、なんとなく左下を見ていた。
10分くらいして静かになったので視線を左下から正面へ戻した。
先生は僕に尋ねる。
『わかりましたか?』
3回目ともなるとこちらも流石に面倒になってくる。
全体の士気を上げるためにこれだけ貢献している人に対して、この扱いはなかなかに酷い話である。
『ありがとうございます。』
僕はもう、なんだかめんどくさくなって適当に答えた。
『そうです。最初からそう言えばいいんです。わかってもらえてよかったです。』
僕は2択だと思っていた自分自身の視野の狭さを恥じた。
時間が立たないと終わりがこないという、3択目があったという可能性を失念していた。
先生は戦闘時間が活動限界を迎えたウルトラマンが、両手を空高く掲げて自分の星へと帰っていくように教室から出て行ってしまった。
30分のウルトラマンのテレビ放送なら、そろそろエンディング曲が流れ始めるタイミングだ。
思わずかっこいいと思ってしまった。
と同時に、宮崎駿のまっくろくろすけに似た50人の顔のない人々も教室を出て行った。そうだ、千と千尋の神隠しだと思った。
僕は、一人残された暗い部屋にスポットライトのように自分にだけ降り注ぐ灯りを見て、顕微鏡で観察されるミジンコの気持ちを思った。
千と千尋の神隠しのまっくろくろすけの棟梁の男の名前が思い出せない。
終わり
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