本日もブログをご覧いただきまして、ありがとうございます。
本日はショートショート(超短編小説)を書きました!
だいたい5分くらいで読めます!
それではどうぞ!!

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『鏡』【ショートショート】
もし時間が静止している世界があるとしたら、僕はそれを感じることができるのだろうか。
真夜中の街外れの駅に停車した電車の中で、僕以外には誰も乗っていない車内を見てそう思った。
中心街から外れた僕の家は、最寄りの駅から10駅圏内で、そこには単調な田畑が広がるばかりで、誰も電車を乗り降りしない無人駅になっている。
この時間帯ということもあり、今日は特に寂れた空気が車両を覆っている。
街灯も何もないので、車窓から見える景色は黒一色で深い海の底にいる、得体の知れない魚になった気分だった。
実は電車なんて全く動いていなくて、5分おきくらいに乗り降りのための扉を開けているだけで、次の駅があたかも来たような演出をしているのではないかと思うほど何も変わらない空間だ。
しかし、誰も乗り降りしない駅に停車する意味があるんだろうか。
駅とは人が電車に乗り降りするためのものなのだとしたら、その存在価値は一体何によって保たれているのか?
僕は窓の外側に広がる黒色を眺めているうちに、瞼が重たくなるのを感じた。
今日は早朝から忙しい1日だったからだろうか。いつもよりも強力に睡魔を感じた。
それからどれくらい経っただろうか?
いよいよ眠りに落ちかけたその瞬間、誰かが耳元で囁いた。
『時間とは、誰かが感じた途端に、また流れ出すものなのかもしれない。』
夢と現実の区別がつかなくなり、ぼんやりとした感覚の中で、心臓の鼓動がいつもよりもほんの少しだけ、強く拍動するのを感じた。
外界は、なおも停滞したままの暗闇に包まれている。
扉が開閉するたびに、儀式のようなその音は僕の存在意義を問いかけている気がした。
もし本当に僕だけが動いているのなら、この電車の中の空間は、僕の内面がそのまま映し出された鏡のようなものだということになる。
車窓が反射して、そこに写る僕が僕に問いかけた。
『どれくらいの時間が経った?』
僕は、一瞬の静寂の後、開いた扉のはるか遠くに見えるかすかな街明かりに、ほのかな希望を見出した。
『どうだろう?少しくらいな気もするし、何日も経ったような気もする。』
僕は僕に向かってそう答える。
すると僕は立ち上がって、黒く反射した鏡の中の世界を、仮に本当に電車が進んでいると仮定するならということだが、電車の進行方向へと歩きながら答えた。
『驚いたな。それは全く正しいよ。』
僕は答える。
『正しい?正しいというのは、何をもって正しいの?』
『そりゃあ、自分の胸に手を当ててみたらいいさ。』
僕は僕の胸に手をあててみた。
僕はその様子を他人事のように眺めていた。
『申し訳ないけど何も分からない。』
僕は素直にそう答えた。
すると僕は、笑いが堪えきれないという様子で言う。
『いやいや、僕には色んなことが分かったよ。僕は本当に素直だね。それに何も分からないということが分かったじゃないか。』
『君は僕なのに随分と賢いんだな。僕は僕の言っていることが分からないよ。』
『とても簡単なことじゃないか。僕は僕なんだよ。僕でしかない。ただ同時に、僕は僕ではない。それだけのことさ。』
その時、暗闇に反射していた僕を写し出した車窓に、住宅街の光が煌々と差し込んで、僕はいなくなってしまった。
暗闇の中に突然照らされた光は、外界を意識した僕の中で時計の針を再び動かし始めた。
もうすぐ最寄り駅に着くみたいだ。
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