読書感想文『僕のメジャースプーン(辻村深月)』から復讐するということの本質について考える。

読書

こんにちは〜。

今回は私の大好きな作家さんの1人である辻村深月さん作の『僕のメジャースプーン』という小説を読みましたので、そちらのご紹介をさせていただきたいと思います。

この記事では筆者が『僕のメジャースプーン』を読んで感じたことや、その見どころの紹介をしています!!

はじめに

あらすじ

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。(講談社文庫)

「書き終えるまで決めていたのはただ一つ、<逃げない>ということ。――私の自信作です」――辻村深月

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。

Amazonから引用

読書感想文

以下、ネタバレ注意です。

見どころ

物語序盤ではふみちゃんと主人公の僕との間の距離感の描き方が細かく辻村さんの作風が良く現れていました。

冒頭から中盤にかけて、みんなよりも少し早くに精神的に大人になってしまったふみちゃんの心情描写が巧みでした。

小学生の時にクラスに1人くらいの割合で居た、教室の端で1人で本を読んでいる年齢の割に大人びた雰囲気のふみちゃんと主人公のぼくが彼女に対する恋愛感情の類とは異なる人間的な意味合いでの敬意のようなものが描かれます。自分が小学生の時に、

こんなことを感じたなあ

と言う心の機微がぼくを通して描かれる中、主人公の僕の憧れであるふみちゃんが可愛がっていたクラスで飼っていたウサギが愉快犯によって惨殺されてしまいます。

これを契機にふみちゃんは大きなショックを受けてしまい社会との繋がりを断つことで自身の身を守ろうとしますが、そんな中でも主人公の僕はこうした中で健気に屈託のない優しさを向けます。

また本書ではこうした繊細な心の機微を描く辻村節が全開な一方で、SF的な要素も組み込まれています。

主人公のぼくは、自分が決めた相手に対して強制的に二択を迫ることが出来るという特別な力を持っています。

本書ではこれを『条件ゲーム提示能力』と呼んでます。

どういったものかというと、

『Aをしなければならない。 そうしなければBになってしまう』と相手に対して言うことで、言われた相手にAかBかを強制的に選ばせるというものです。

主人公の僕は、この力を上手く使ってこの愉快犯に復讐しようとするのですが、このプロセスに人間が他人に対して復讐することについての本質的な部分の作者の見解が見られ、自分自身それについて深く考えさせられました。

果たしてどういった結末を迎えるのかはぜひ皆さんで読んで見てほしいです!!

印象的なシーン

この話では主人公の僕が犯人に対して、いかに苦しむかたちで復讐をするかと考えるシーンが何度かあります。

主人公の僕は特別な能力を使い、自分が定めた対象に対して強制的に2択を叩きつけるという計画を立てますが、その2択を何にするのかを考えます。

この能力は、

明日一緒にご飯を食べよう、そうしないと一生私とごはんをたべられないよ。

このようにいった時にこれを言われた相手に取って受け入れられる方を強制的に指示に従わせるという能力です。

ぼくはこの能力を、同じ能力を持っている親戚に弟子入りしてうまく扱おうとするのですが、この2択を考える主人公の僕と師匠による復讐というものについての考察が鋭く面白かったです。

復讐の本質とは

物語では多くのプロセスを経て、主人公のぼくは事件のストレスによって動けなくなってしまったふみちゃんを取り返すために、この愉快犯に向かってその目の前で

自分を殺さなければ愉快犯の詩通っている大学に戻れないようにする

ということを述べます。

このことからぼくは殺されそうになるも、なんとか危機一髪でそれを免れます。

一連の流れをは見ていたこおん能力の使い方を教えていた師匠は、

そんなことをしてもふみちゃんはまた新たな復讐を産んでしまうと解きます。

ここの場面が個人的には印象的なシーンで、人のためにする他人の復讐などこの世にないということを感じました。

自分ではない誰かのためにやっているつもりでも、その復讐を受けた側にはまた新たな確執が生まれるのでこの繰り返しでいつまで経ってもキリがありません。

また、これは現実社会にも通じることだと感じました。

愉快犯はぼくの2択を迫る能力に結果的には負ける形で、ぼくにとって良い展開になるのですが復讐することが個人的な自己満足になった時それは何度も繰り返してしまうのだろうなと感じました。

まとめ

『僕のメジャースプーン』は人に復讐することについて考えさせられた一冊でした。

主人王のぼくはとても聡明な男の子ですが変に擦れておらず、彼の屈託のない思いが心を打つシーンが多くとても面白い作品でした。

また、辻村作品が好きな方々にとっては別作品で出てきた登場人物がところどころに現れており世界は繋がっているというふうに感じた作品でもありました。

よければ読んでください!!

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