【ショートショート2000文字】『熱いお茶。』(オリジナル短編)

小説

こんにちは〜!

しばらくぶりです!笑

今回は、ショートショート(超短編)を描きましたので、読んでいただけると嬉しいです。

2000文字なので、だいたい5、6分くらいで読んでいただけます!!

『熱いお茶。』

『ねえ、聞いて!!裕子ちゃん、最近、彼氏と別れたらしいよー!』

『え!マジ!?どっちが振ったの?』

『これがさ!意外にも!達也の方らしいのよ!信じらんないよね〜!』

『ウソ〜!サイッテー!裕子マジ可哀想なんだけど〜!私の親友になんてことするわけ〜!信じらんなーい!』

教室の後ろの方にいる、いつもつるんでいる4人の女子グループから、やけに大きな声の会話が、教室の真ん中ら辺の席で、自分の腕を折りたたんで、枕にしている僕のところまで聞こえる。

僕は特に何の用事もないスマホと向き合い、黒の背景に白の文字でXと書かれたアイコンを押し、4人組のいる方と逆を向きながら画面を流し見る。

『いや〜。でもワタシはそんな気してたなぁ〜。』

『えー。何で〜?』

『だって裕子って、意外と性格悪いらしいよ。』

らしいよ。の部分が妙に耳に残る。

僕は空になった水筒に、さっき自販機で買ってきた、ペットボトル入りの温かいお茶を注ぎ移す。

コポポポポポポポポポ

水筒の中が満たされていくのに伴って、注がれるお茶の音が高くなっていく。

『あー、でもわかるかも〜。こないだ裕子と美術室の掃除の班が一緒だったんだけどさ〜。裕子ってほんとに掃き掃除しないの!』

『えー!マジ〜!サイテーじゃーん!』

『だよね〜!掃除の班は私と合わせて、裕子とタカシの3人しかいないのに、掃き掃除しないでずーっと、床とか机とかの拭き掃除ばっかやってんの!』

声の大きさが、1段階大きくなるのを感じる。と同時に、まあ要するになんでもいいのだろうなと思う。

『それでさ!裕子に声かけて、掃き掃除手伝って、と言おうと思ったんだけどお!後で悪口言われるのも嫌だからさあ〜。タカシと黙ってふたりでずーっと掃き掃除してたっての!』

『えー!サイアクー!!』

もうすぐ学校で行われる文化祭ではクラス毎に、『演劇』か『教室を使って大きな画用紙に絵を描くこと』のどちらかを選ぶ。

およそ高校生の出し物にしては、粗末なものだなあとは思うものの、通っている塾の他校の友達も、だいたい似たようなものだというから驚きだ。

美術室の絵の具は、この文化祭前の期間に限っては使い放題だというので、ヤンチャな男子たちが美術室の絵の具を水風船に溶かして、投げ合う遊びが横行し、学年主任の体育教師が美術室の使い方について、学年集会で吠えたのはつい昨日の今頃だったなぁと僕は思う。

ともあれ、うちのクラスはイソップ童話の『演劇』をすることになり、そんな中で本番に向けて行われる日頃の練習の甲斐もあり、よく揃った『えー!サイアクー!!』だった。

『あー、でもおー、』

はじめに裕子の親友と言っていた、女子の声がする。

僕は水筒に入れ替えた、温かいお茶に口をつける。

『あー、でもおー、裕子って意外と空気読めないところあるよね!私も前から思ったたんだけど〜、あの子、けっこう親が複雑らしいよ!』

口にしたお茶が、思っていたよりも暑かったので唇を火傷してしまった。

ヒリヒリとする唇。

暑くて少しこぼれてしまったお茶が、白い制服のカッターシャツに染みていく。

僕は、ペットボトルから飲む時はこんなに熱かっただろか、と思う。

また、ペットボトルから出た途端に、お茶が熱くなることなんてあり得るんだろうか、とも思った。

『キャハハハハ〜』

教室の隅からする、光沢のある艶やかな黄色い声が、教室のカーテンを揺らす。

もう11月だから、正直窓を開けると僕は寒いと思うけれど、学校のきまりで休み時間は窓を開けて換気をしなければならない。

冷たい風が、僕の指先を軽く刺した。

換気をするのは風邪やウイルスの蔓延を防ぐことが目的なのだろうと思うけど、こんなに寒いと風邪をひいてしまいそうだ。

換気をすることで、僕みたいな虚弱体質が風邪を引くかもしれないなんてことは、多分、偉い人は一つも考えていないんだろう。というよりも、そういった発想がそもそも欠落しているように思う。

そこへ、件の裕子が4人グループと教室の対角線上にある扉から、教室に入ってきた。

『あー!みんな!こんなとこにいたのー!』

裕子は小走りで、手を振りながら嬉しそうに、4人グループに合流する。

『あー。裕子ぉ〜。』

さっきまでのボルテージが1段階下がった。

4人のうちの1人が、聞きにくそうな声で裕子に聞く。

『ていうかさ〜。裕子って達也と別れたってほんと?』

4人組の空気が、どことなく張り詰めるのがわかった。

しかし、裕子はケロッとした声で答える。

『え!別れるわけないじゃん!何なら一昨日までディズニー行ってたし!』

張り詰めた糸が、緩んでいくのを感じた。

『だよね〜!いやいや!うちらは信じたたんだけどさ!なんかそういう噂が回ってんの!裕子かわいいから気をつけな〜!』

4人のうちの誰かが言った。

『いや〜、別に可愛くないよお〜。』

まんざらでもない反応が返ってくる。

裕子は取り戻すように続けた。

『ていうかさ!ディズニーでさ!お土産におそろのキーホルダー買ったからみんなでつけよ!うちら友達最高〜!』

『最高〜!!』

それはやっぱり、よく揃った声だった。

4人グループにもう一人加わり、5人の仲睦まじい声が聞こえたところで、僕は5人組の方に腕枕を組み替え、逆側の頬を下にする。

イテテ、あの体育教師の野郎。

この令和の時代にに頬をビンタなんかするか?普通!

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!!

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